過払い請求の最前線で戦う司法書士が考える報酬相場

弁護士・司法書士の代理人報酬は、本当に様々です。
私が考える相場を書いていきますが、あくまでも主観となりますのでその点ご理解のほどお願い致します。
一切の責任は負いかねますのでご了承ください。
(※2011年1月現在の考察です。)

まずは報酬について知ろう

報酬は大抵の法律事務所で次のように分けられていることが非常に多いようです。

  • 基本報酬
  • 減額(過払)報酬
  • 訴訟費用
  • 実費

大きく分けて以上の4つでしょうか。

基本報酬って?

まず、基本報酬について書きます。
これは債務整理・過払い請求の結果がどうであろうと基本的な報酬としていただきますよ、という意味合いの報酬です。
大抵が債権者1社につきいくらとなっています。

『私が考える相場』
弁護士事務所だと多くが1社40,000円となっていることが多いようです。
司法書士事務所の場合、1社20,000〜40,000円ほどでしょうか。

弁護士事務所でも最近では40,000円よりも基本報酬が安い事務所も多く見かけます。
基本報酬が1社40,000円を超える事務所はほとんど私は見かけません。
『考察』
基本報酬は安ければいい、高ければ悪いということの目安にはなりません。
ですが、まったく同じ実力、対応の法律事務所が2つあったとして、片方が40,000円でもう片方が20,000円なら後者の方が良いとは言えます。
減額があまりないようなケース(取引年数が短い、ショッピングが多い)だと、かかる報酬のうち、基本報酬が占める割合が多くなりますので基本報酬が安い法律事務所を選ぶと費用面では良いでしょう。

〜着手金と成功報酬〜

一見、基本報酬が20,000円のように見えて、契約書をよく見ると実は着手基本報酬が20,000円でお手続きが成功したら成功基本報酬としてもう20,000円となっているケースもあります。
着手金を取らない法律事務所であっても、このように二段構えの基本報酬となっている場合があります。

減額(過払)報酬って?

減額(過払)報酬とは、現在の借金額→和解額の差額にパーセンテージをかけ、報酬としていただきますという報酬のことで、 簡単に言えば、『これくらい借金が減り、得をしたのでその○○%分を成功報酬としていただきますよ』というものでしょうか。

  • 例(1) 現在の借金額50万円→和解額10万円 = 減額報酬の算定額40万円
  • 例(2) 現在の借金額0円(完済)→和解額(返還された過払い金)40万円 = 過払報酬の算定額40万円
  • 例(3) 現在の借金額50万円→和解額(返還された過払い金)30万円 = 減額報酬の算定額50万円+過払報酬の算定額30万円

減額(過払)報酬とかっこ書きで書いているのは、法律事務所によって報酬形態が異なり、様々なニュアンスが存在するためです。
例(1)のとおり、ただの減額であれば、それにパーセンテージをかけて報酬をいただく報酬を減額報酬と呼ぶと思います。
例(2)のように完済済み、いわゆる完済後過払い請求であれば、過払報酬と呼ばれることが多いですが、減額ではあるので減額報酬と呼ぶ場合もあります。
例(3)だと、減額と過払い金が混ざっていますが、これをまとめて減額報酬と呼ぶ事務所もいれば、分ける事務所もあります。分ける場合がある理由としては、減額報酬の%と過払報酬の%が異なるようなケースがあるからです。

『私が考える相場』
減額報酬は安めで過払報酬が高めなど、異なる報酬形態を採用している法律事務所もあるため、一概にまとめてパーセンテージで相場を示すのも難しいのですが、おおよそこれくらいが相場ではないかなと考えます。
減額(過払)報酬 20%前後
『考察』
これも安ければ良し、高ければ悪いという目安にはなりませんが、限度はあるではないかと私は考えます。
私の勝手な主観ですが、一桁台のパーセンテージだと、『これで経営が成り立つのだろうか?実際に依頼しに行ったら契約書に他の項目で報酬が発生するのではないか?』などと考えてしまいますし、30%近い割合だと、『これじゃ消費者金融の違法金利と変わらないのでは?』と首を傾げてしまいます。
報酬設定は事務所の自由とされていますのでこれは批評などではなく、あくまでも私個人の主観となります。
また、ケース別の考え方ですが、債権者数は少ないがかなり取引年数が長く減額幅が大きくなりそうだという場合は、たとえ基本報酬が高くとも減額(過払)報酬が安いところに頼む方が費用面では良いでしょう。

訴訟報酬って?

訴訟報酬と呼ぶのが正しいのかはわかりませんが、過払い金返還請求訴訟を代理人として行う際の報酬を訴訟報酬、訴状作成代行報酬などと呼んだりします。
これは依頼をしたら必ず発生する報酬というわけではないと思います。
あくまでも、訴訟をしたら発生する報酬です。

そもそもどういう場合に訴訟となるのか、そうでない場合って何だろう?と疑問が出てくるかと思います。
事務所の方針にもよりますが、通常は訴訟を行わず、任意(裁判外)交渉での過払い金返還交渉を予定しています。
原則、任意交渉だというわけではなく、上記の減額(過払)報酬の料金内では任意交渉しか行わないという意味で、だからこそ、訴訟報酬が別途定められているという意味です。

昨今、任意交渉だけでは満足のいく返還を業者が行わないことが非常に多くなっています。
任意交渉での過払い金返還率の低下ですね。
そうなりますと、いわゆる示談でちゃんと返してくれないなら訴訟だ!という流れになることもあります。
それが過払い金返還請求訴訟です。

訴訟を行うのか、任意交渉だけで返還を求めるのかは、通常依頼者の意思をお聞きした上で決めていくものだとは思いますが、事務所にはそれぞれ事務所の方針があり、全件訴訟という方針もあれば、訴訟は行わないという方針もあったりします。
訴訟にするか、任意交渉かの依頼者ベースでの判断は、業者の任意の返還率で満足がいくか、費用を払ってでも訴訟を行って高い金額を返還してもらいたいかを基準に考えれば良いのかなと考えます。
依頼の前の段階で、『この業者は任意だと返還率はどれくらいですか?』とか、『御事務所は訴訟か任意かは依頼人の意見を尊重してくれるのですか?』とか、『全件訴訟であればこの業者は今までの経験からどれくらい勝ち取れますか?』など、ご自身の返還請求方針や費用対効果の面から検討を行うための材料をきちんと聞いておくと良いでしょう。

『私の考える相場』
この訴訟報酬は本当に事務所によって様々なので正直何とも言えません。
あくまで、『こういった報酬規定を見たことがある』という形で紹介をしていきたいと思います。
  • 訴訟報酬例(1) 〜パーセンテージUPパターン〜
  • 任意交渉なら減額(過払)報酬は20%だけれど、訴訟を行う場合はその割合が25%になりますよというケース
  • 訴訟報酬例(2) 〜固定金額パターン〜
  • 訴訟を行う場合は一律50,000円いただきますよというケース
  • 訴訟報酬例(3) 〜行動別請求パターン〜
  • 訴状作成すると20,000円、準備書面を作成すると10,000円、裁判所代理出廷すると1日15,000円ですというケース
『考察』
これは相場と考えるよりは、『その訴訟報酬をかけてでも訴訟を行った方が任意交渉での返還より手元に残るお金が多くなるか、少なくなるか』という費用対効果の面で考えると良いかなと思います。
(1)のケースであれば、パーセンテージUP型ですから、訴訟にしたことであがる金額次第でしょうか。
任意であれば30万円、訴訟であれば50万円だとすると、次のような予想となります。
任意:30万円返還→減額(過払)報酬20%なので報酬は6万円→手元に残るのは24万円訴訟:50万円返還→減額(過払)報酬25%なので報酬は12.5万円→手元に残るのは37.5万円※基本報酬の計算は考慮していません。
上記のようなケースであれば訴訟の方が費用対効果は良さそうですね。
ですが、これがもっと差が少ないような場合、訴訟自体100%勝つなどの予想は立たないのが普通ですから、負けたりするリスクを考えながら慎重に決定していかなければいけませんね。
たとえ、明らかに訴訟の方が返還率が高くとも、時間がかかりすぎて訴訟進行中に相手方が倒産したら元も子もないというリスクや敗訴するリスクも慎重に依頼人にて検討し、法律家としっかり協議する必要もあります。
(2)のケースも(3)のケースも基本は固定金額なので、これも(1)のケースと同じく『任意だったらこれくらい、訴訟だったらこれくらい返還されそうだ』という予想から費用対効果で試算をし、決定していけば良いのかなと思います。
ただし、(3)のケースだと裁判がこじれれば準備書面作成も裁判所出廷も続くため、いくらくらい訴訟費用がかかるのかが訴訟提起の段階では見通しが立ちにくいということもあります。
『まとめ』
訴訟は、勝つこともあれば負けてしまうこともあります。
法律家がある程度予想を立ててくれますが、最終判断はご自身にて責任を持って行わなければなりません。
訴訟に方針を定める理由として、『この業者に過払い金を減額してやるのは嫌だ!』という感情的理由や単純に費用対効果という経済的理由など様々なものがありますが、専門家の予想やアドバイスを参考に、慎重に決定していきましょう。

まとめ

報酬相場というのはあるようでないようなものです。
金額が高いから良質なサービスのはずだ、金額が高いから利益主義だ、は誤解です。
金額が安いから良質なサービスじゃない、金額が安いから素晴らしい、も誤解です。
報酬額だけを見てその事務所の質がわかるのであれば、それほど楽なことはありません。
あくまでも参考程度に私の考える報酬相場を書いてきましたが、重要なのはこのページ内の内容をそのまま参考に
するのではなく、ご自身のケースに当てはめ、『依頼をして納得できる金額か?』を基準に判断すべきだと思います。